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■壊れた・・・_冂○


2004年は陽性な梅雨模様だった。昨年はオホーツクの湿った気流で重たくじめじめした6,7月だったが、今年は重たいところがなくザーと降ってはカァーッと晴れ上がる。当然気温も高めだ。

なのに警戒感度が不足だった。_冂○

気温が高い夏場は熱暴走の可能性がなきにしもあらず。夏場は我が完対パワーアンプはそのケース天板を開けはなって放熱効果を高める安全策を講じるのが吉なのだ。実際ケース天板を開放しておきさえすれば熱暴走などおきないし、アイドリング電流も極めて安定なのだ。が、我がウサギ小屋の平面面積は僅少なのでどうしても接地面積を節約するためにアンプを重ねておく必要があって、夏場以外はパワーアンプもやはり蓋を閉めて重ねた状態で運用しているのである。今年もそろそろ天板を開ける時期かなと思ってはいたのだが、まだ大丈夫だろう、電源ラインに保護用のヒューズも入れてあるし・・・、と怠け心もあってちょっとの手間を惜しんで油断したのがいけなかった。

ある日そのヒューズが音をたて閃光を放って切れた。あっ! 一瞬青醒める・・・


な〜に切れたのはヒューズだけだろう、という淡い願いを込めた希望的観測は甘かった。20世紀の人類の貴重な遺産であるエピタキシャルメサ型バイポーラパワートランジスタ、2SD217が片チャンネル上下とも逝ってしまったのである・・・。すまない・・・_冂○



完全対称型パワーアンプの温度補償は必ずしも簡単ではない。特にこれをバイポーラトランジスタで構成するとバイポーラTRの温度係数は皆単純に正であるから、回路中の全ての要素が温度上昇と共に出力段バイアスを増加させる方向に働いてしまう。これによって出力段は一層熱を発し、それが回路中の素子をさらに暖め、これがまた出力段バイアスを増加させるという温度的正帰還状態になるのである。完全対称型の回路構成は典型的にこれが当てはまる。初段の定電流回路、2段目差動アンプ、終段ドライバー等、全て出力段のアイドリングを増やそうという方向で働くのだ。これ故その温度補償はなかなか面倒なのである。

この点FETはQ点がどこにあるかという問題はあるもののQ点電流以上では温度係数は負となるので、これらがFETで構成されていると温度上昇と共に出力段バイアスを減少させるという温度的負帰還状態が期待できるので楽だ。実際これらがFETである我がNo−144やNo−144(改)はこれまで一度も熱暴走事故を起こしたことはない。これらは外見的には終段UHC−MOSをサーミスタ1個で温度補償しているだけのように見えるが、実はこれらFETの自己温度補償作用が有効に働いているのである。(といって完璧であるという訳ではないので御油断なきよう。(^^;)

だが、バイポーラTRの場合はそうはいかない。のでより厳密な温度補償を考えないと上手く行かない。だから我がNo−139(もどき)その2ではサーミスタで終段パワートランジスタの他にそのドライバーである2SC960の補償もしていたのである。が、やはり初段定電流回路と2段目差動アンプが野放しでは駄目なようだ。ケース天板を開けて通気を良くした場合は問題がないのだが、ケースを閉めて内部に熱気が貯まる状態だと徐々に終段アイドリングが増加してしまう。

と、分かってはいたのだが、この世に完全なものはない。その欠点や限界をわきまえていかに長所や能力を活用していくかがこの世の核心だ。な〜んて誰でも知っていることだがこれがなかなか身に付かないのもまた世の常。(^^; 今回はその活用のさじ加減を誤ったのだ。という反省を踏まえて・・・どうするか。である。
そこでこれである。
No−174に学びNo−139(もどき)をNo−174(もどき)に改造したのだ。





最新の完全対称型パワーアンプは、2段目差動アンプに電流帰還NFBを掛けて利得を殺しその分初段差動アンプと出力段で利得を獲得するという手法が採用されている。我が家ではその方式のパワーアンプはまだ試していない。ので、この機会にその新機軸を試してみたい。

ということもあるが、本当の理由は2段目定電流回路の温度補償作用への期待だ。といってここに移されたサーミスタによる温度補償作用のことではない。定電流回路に起用されたTR自体による温度補償作用である。この定電流回路はここでは2段目差動アンプが終段に送り込む電流の一部を引き抜くのがその役割である。であるから直流動作としてはその働きが強まるほどに終段のバイアスは減少するのである。サーミスタ200D5もそういう理由でここに設置されている。これが暖まって抵抗値が減ると定電流回路の動作電流が増えて結果終段のバイアスが減少するのである。と、同じことが定電流回路のTRに期待できるのだ。その温度係数は正であるからその温度が高まるほどに定電流回路の動作電流は増加し、結果終段のバイアスを減少させる方向に働く。要するにこの回路構成によってTRの正の温度係数が負の温度係数として働くのである。そしてこれを初段定電流回路のTRと2段目差動アンプのTRの正の温度係数をキャンセルするという温度補償素子として機能させようということなのである。

実際のところは初段定電流回路はエミッタ抵抗が2.4kΩと大きいのでそれほど影響は大きくなく、2段目差動アンプの影響の方が遥かに大きい。これが発熱すると共に動作電流が増えて終段のバイアスを増加させてしまうところを、2段目定電流回路のTRの方も同様に発熱することにより定電流回路の動作電流も増えてこれを定電流回路側に吸い込むことにより終段のバイアスは一定に保たれる。という温度補償効果である。であるから上下のTRの消費電力量を揃え、エミッタ抵抗値も同じにすることが理想であり、また、キャンセル効果を高めるには2段目定電流回路のエミッタ抵抗を小さくするほど効果的ということになるのだが、温度補償の観点だけでそれらを決する訳にはいかないので、なるべくそのようなことも頭に入れて定数を決定する。で、この回路である。

この点以外は初段と終段でゲインを稼ぎ2段目はその橋渡しに徹するという新思想を守ったNo−174(もどき)になっていると思うが、2段目差動アンプにカスコードアンプを付けているのはその思想に反する点かもしれない。2段目を極力シンプルにするという思想には相容れない感じがするのだが、ここのCobがこのアンプの主要な位相補正を担うという現実からして、カスコードにしてSEコンで位相補正したいという衝動にどうしても駆られてしまう。(^^;

また、終段TRのエミッタ抵抗0.1Ωも復活することにした。これの音への影響の大きさはかつて体験したことであり大きな賭だが、ゲイン的にはその分初段にgmの大きい2SK117を採用してお釣りがくる筈であり、0.1Ωの電流帰還NFB効果による終段の特性改善も考えるとトータル的には良くなる可能性もなきにしもあらずなのではないかと。で、0.1Ωを追加するのであれば保護回路も追加すべきであろうということで将来に向け最新の電源遮断型保護回路の保護条件検出部も加えることにしたのである。なのに初段にも従来からの保護回路の一部が付いているのは新保護回路の本体を作るのはずっと後回しと考えているから(^^;




とまぁ私としてはかなり考えた結果の定数設定である訳なのだが、一応その妥当性はPSpice(評価版)にも占って貰っておいたほうが良いだろう。

で、rval=2Ω、4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、1kΩのパラメトリック解析。終段アイドリング電流はこれで327mAである。






凡例左からrval=2Ω、4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、1kΩの場合。そのオープンゲインは低域で負荷4Ω時67.5dB、負荷8Ωの場合73dBに達することが分かる。電圧増幅段の電源電圧が低いために初段の動作電流とその負荷抵抗値を上げられない設定であるにもかかわらずオリジナルNo−174と同程度のオープンゲインが得られており、No−174(もどき)と称する資格はありそうだ。

が、これでオリジナルと同じクローズドゲイン設定23db程度(=NFB量50dB程度)はなしえるだろうか。ちょっと危なげかも・・・(^^; と言うのは、どうも今一上手く行かないのである。負荷が低インピーダンスの場合では100kHzから10MHz当たりの位相回転の戻りが思うようにならないし、逆にインピーダンスが高くなるとその付近の位相の戻りは良いのだが、下の図でも分かるように利得の方の減衰度が悪くなって折角戻った位相の戻り効果をキャンセルしてしまうのである。これからするとどうも23dB設定は難しそうな感じがするのだが・・・
 










ではあるのだが、取りあえず製作にかかる。

今回はこの際なのでケース内部構造も一新し、従来の2次元配置構造を改め3次元配置構造に大規模改造することにした。

従来すべての基盤、放熱板をケース底板に取り付けていたのだが、これは当初の製作の手間は省けるものの、楽あれば苦ありでその後基盤にちょっとした手を加えるにも難儀を強いられた。ので、この際立体構造を採用し、ケース天板と底板が完全にフリーになるように、放熱板はケース側板に取り付け、基盤はケース上部に渡したアルミの桟から吊り下げたのである。

結果、メンテナンス性能は比較にならないほどに向上し、全体の配線作業も当然放熱板、基盤をケースに取り付けてからケースをひっくり返した写真左下の状態で行ったのである。実を言えば、どのみち今回の回路改変に伴う改造作業はとても一回では完成版にはならないだろうという思いもあるのである。基盤作り直しも想定しておく必要がある。となると、このように簡単に基盤を交換して配線作業もやり直せるようにしておく必要がある。という当初からの見通しに基づくケース内部構造の一新である。

なお、今回2段目に定電流回路を導入する関係上初段、2段目用のマイナス電源が必要になる。これを我が家でNo−139(もどき)にも流用しているNo−144用の電源から作り出すため、余っているAC6.3Vを両波整流して−34Vに重ねて−42Vを得た。写真右下がそのために新たに電源部に加わった造作だ。

で、完成だ。となれば早速、動作確認と音出しだ。(^^) ±34V電源ラインには1Aのヒューズを入れ調整を始めよう。


結論から言えば音は出た。さらに期待の2段目定電流回路による温度補償効果は実に効果的だ。この暑い最中にこれまでは天板を付けた場合はアイドリング電流の微増傾向が止まらない状況だったが(天板を外せばOK)、今度はその状態でもきちんと一定値を保つではないか。ようやく温度補償は完成だ。(^^)

と思ったのであるが、どうもいかんのである。何が?って動作が今一不満足なのだ。ある位相補正状態では出力オープンで不安定だったり、では、と出力オープンで安定になるようにすると今度は低インピーダンス負荷(2Ω負荷)で不安定になったり、例の2段目のCを増やせば安定になるというようなものでもなさそうで、実は上の回路図の状態はこれら位相補正の試行錯誤を行った結果の最終回路図なのである。

これでまずまず実用的な状態なのだが、結局はほどなく解体してしまった。だから上の写真はもう幻なのである。(^^;

別に音が悪いということではない。のだがやはりどこかまだ不安定なのだ。例えばそれが電源オフ時等の過渡的状態の際に現れる。電流計で監視してみると電源オフの瞬間発振したかのように一瞬大電流が流れる。

やはりシミュレーションが示すとおりなのだ。あれこれシミュレーションを重ねてもなかなか上手く行かないのは1MHz付近での頑強な位相回転である。どうもその理由は素子数が多いという点とIV変換抵抗が1.5kΩと大きいという点が絡んでいるような感じなのである。0.1Ωのエミッタ抵抗を入れるとそのNFB効果で終段のゲインが減少しその結果2段目に入れたCの位相補正効果が減少することもかなり影響している。結論としてはNo−174型式は一筋縄ではいかないようで、“もどき”を考えられるほど優しくないなと。で、大人しく諦めてしまったのだ。(^^;







■No−139(もどき)に戻る(^^;


考えてみればNo−174型式は入力インピーダンスの低い(=動作に電流を要する)バイポーラTRから可能な限りの最大出力を絞り出すためのものであって、我が家では電源にNo−144用電源を流用する以上得られる最大出力はその電源電圧で制限されるのだからその回路型式を採用する必然性はない。し、比較的大きなオープンゲインも2段目差動アンプの本来の能力を活用しつつ、初段の高域時定数はカスコードを採用することもあってK30をK117に変更してもあまり影響はないから初段にgmの大きなFETを採用することでも達成しうるのではないか。

また、半導体完全対称型パワーアンプの最低時定数=fcは2段目差動アンプに電流帰還を採用してもしなくてもそのB−C間のCで形成されるには違いないし、2段目にゲインを持たせても適正なポール配置をすれば終段に加えて2段目がゲインを持っても完全対称型はそれらのポールが1個に溶け込むのだから大丈夫の筈。2段目定電流回路による完璧な温度補償効果には未練はあるがそれはまた別な方法を考えよう、等々と考えて結局No−139(もどき)に戻ってしまったのである。(^^;

それがこれだ。実のところはあれやこれやシミュレーションし、位相補正の試行錯誤もやった結果なのだが(^^;
前のNo−139(もどき)その2に比較すると、回路的には初段FETが2SK30から2SK117に変わり、終段2SD217に0.1Ωのエミッタ抵抗が加えられて、2段目の位相補正コンデンサーが5pFから10pFに変わった程度の違いしかない。

その他、初段定電流回路にツェナーとシリーズに1S1588、初段負荷の1.5kΩと温度補償用サーミスタの間に1S1588が加わったが、勿論これらは初段定電流回路の2SC1400と2段目差動アンプの2SA607を温度補償するためのものだ。No−174型式における2段目定電流回路によるこれらの温度補償に変わるものとして導入したのである。

電源は元に戻って3電源でも十分なのだが、すでに電源部は改造済みであるので初段用の−42V電源は折角だから活用することにしたのだ。






PSpice(評価版)でシミュレーションしてみよう。これで終段アイドリング電流は310mA程度である。

負荷は同じくrval=2Ω、4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、1kΩのパラメトリック解析。






オープンゲインは低域で負荷8Ω時73dB、4Ω時67.5dBと上の174(もどき)と同程度確保できている。十分ではないか。これで回路図を比べてみると分かるように初段2SK117のソース側のトリマーの抵抗値は200Ωであり、2段目差動アンプの負荷のIV変換抵抗の値も220Ωなのだ。ともにゲインを小さくする方向での定数設定だが特性的には望ましい方向だ。これで同じゲインと電源電圧に見合った最大出力、そして安定な動作が得られるならばこれで十分ではないか、という訳である。

なーんて(^^;、実はこちらも作った当初は上のNo−174(もどき)と同じく位相補正にはやや難儀したのだが、最終的には出力に0.1μF+10Ωをパラに入れることで実用上十二分と思える安定度を確保したという経緯があったことを告白せねばなるまい。(^^;





今回の経験からすると、終段パワーTRのエミッタに0.1Ωの抵抗を入れると当然終段の電圧ゲインは減少し、逆に周波数特性は良くなるのだが、これによって2段目差動アンプBC間のCによる位相補正効果は弱まりこれによる1MHz超の領域における位相の戻りが小さくなる点がひとつ、そして周波数特性が良くなるせいか特にアンプ負荷のインピーダンスが大きくなるほどにMHz帯域での利得の減衰率が低下してしまうことが今ひとつ、とあって、これがどうもバイポーラTRによる完全対称型パワーアンプのオープンゲインを大きくして大きなNFBを掛けようとする場合にネックになるように感じられるのである。

K先生はこの辺何のこともなく上手く回避され、深いNFBを安定に掛けておられるのだが、残念ながら私にはその技量がないようだ。(^^;

ので後者の問題については出力に0.1μF+10Ωをパラに入れることで回避したのである。そして今ひとつの前者の問題については初段に300pF+1kΩのステップ型位相補正を入れるか2段目差動アンプB−C間の位相補正Cを20〜40pFに増やせば良いのだが、私としては50dBもの深いNFBを掛けるのを諦め、クローズドゲインを以前と同様の32dB設定にすることで対処することにした。これでも低域で41dBものNFBが掛かることであるし、あまり位相補正だらけなのも何となく見苦しい感じがするし、音もこの方が良さげな気がするし、やはりNo−139(もどき)を名乗る以上クローズドゲイン設定は32dBでしょう。(^^;




というわけでNo−139(もどき)に戻って当初作り直した基盤が左上であり、ケース内に収まっている基盤の今の姿が右上である。2段目差動アンプの2SA607に今回加えた温度補償は当初からのものであるが、初段定電流回路の2SC1400の温度補償とアンプ出力にパラの0.1μF+10Ωの位相補正は後から加わったものであることが分かる。まっ、試行錯誤の結果であるが、これもケース内を3次元構造にしたお陰で楽に可能になったのだ。(^^)

で、温度補償は完璧になったのか? と言えばこれでも2段目定電流回路で補償したNo−174(もどき)までには完全ではないと言わなければならない。が、少なくとも以前の状態よりは随分改善されたと言えるだろう。なお、子細な点ではサーミスタにパラの抵抗が一個220Ωから330Ωに変更になっているが、これは初段の動作点電流がやや増えたことに伴うものである。この抵抗値を増やすと過補償になる。といってわざと過補償にすれば良いというものではない。そういうことをすると夏場に調整した時は良いが、環境温度の下がった冬場にアンプを始動する際に過大なアイドリング電流が流れて、下手をするとパワーTRを昇天させかねない。ということになるのだ。





で、問題は音だが・・・。

低域のエネルギーでも我がUHC−MOSパワーアンプと互角に渡り合える“No−139(もどき)その3 With 2SD217”となったようだ。(^^)






(2004年10月11日)






20年ぶりのその後



・早20年。



・No-139もどきwith2SD217パワーアンプ。



・久方振りに現役復帰させる。



・改造、改廃をまぬがれて生き残っていたのだが、現役復帰前に多少見直す。



・その前に、終段に起用しているトランジスタのgmをUHC-MOS-FETたちと比較してみる。
・左から、青が2SC5200、赤が2SK2554、緑がCOPT−121、そしてピンクがCOPT−119。


・20Aまでしか表示していないのは、トランジスタはこれ以上は飽和してしまうため。


・が、8Ω100Wパワーアンプでも必要な電流最大値は5A程度なので、実際のところUHC-MOS-FETの大電流領域は宝の持ち腐れ。


・で、こうして観れば、トランジスタのgmは、UHC-MOS-FETでも一番大きいgmの2SK2554と同程度に大きい。


・だからトランジスタで良い。


・というのがNo−139(もどき)with 2SD217が今日まで生き残ってきた理由の一つ。
・今回、復帰に当たって多少回路を見直した。
 
・初段差動アンプのFETを2SK117から2SK30に変更してオープンゲインを10dB下げ、クローズドゲイン設定も32dB程度から22dB程度に10dB下げる。


・双方同じく10dB下げたので位相補正コンデンサーの容量は従来と同じ。


・ただ、2段目差動アンプの左側にも同容量の位相補正コンデンサーを追加した。不要のように思えるがLTSpiceの占いではMHz以上の領域で効果がある。


・終段の2SD217ののアイドリング電流設定は150mA程度にした。



・初段定電流回路の2SC1400と2段目差動アンプの2SA607はそれぞれ1S1588で温度補償し、終段ダーリントンの2SC960と2SD217もサーミスタ200D5でそれぞれ温度補償しているので、アイドリング電流の安定度は良い。
・ゲイン-周波数特性。



・図は2つで一組で、上がR25=1Ω、R24=1kΩの場合、中がR24=R24=500Ωの場合、下がR25=1kΩ、R24=1Ωの場合。



・各組の上の図は、いずれも赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲイン。



・負荷R=4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)としたパラメトリック解析なので、オープンゲイン(赤)とループゲイン(青)は下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。



・緑のクローズドゲインは、それぞれ拡大したものを下の図としてに付けている。



・これもそれぞれ下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。



・R24とR25は実際は1kΩのボリュームで、電圧帰還と電流帰還を調整するモーショナルフィードバック調整用だが、上がR25を0.1Ωとしたのが電圧帰還(VNF)最大の場合、下がR24を0.1Ωとしたのが電流帰還(CNF)最大の場合、中がR24=R25=500Ωとした中間の場合である。



・電圧帰還最大から電流帰還最大方向で、8Ω負荷の場合のクローズドゲインの変化が一番小さいが、4Ω負荷では、その方向でややクローズドゲインが小さくなり、8Ω以上では、その方向でクローズドゲインがやや大きくなり、その程度は負荷抵抗が大きい方が大きい。



・これは電流帰還側の電流検出抵抗R23を0.47Ωにしてあるため。



・このアンプは8Ω負荷を想定しているので、このクローズドゲイン設定では本来R23はMCP74の0.68Ωにすべきなのだが、手に入らなかった。



・ので、しょうがなくMCP74の0.47Ωで代用。



・これが0.47Ωだと、6Ω負荷で電圧帰還最大と電流帰還最大でのクローズドゲインの乖離が一番小さくなるだろう。



・いずれ、R23で設定した想定負荷ちより大きな負荷では、電圧帰還最大から電流帰還最大方向でクローズドゲインがやや大きくなり、想定負荷より小さな負荷では、電圧帰還最大から電流帰還最大方向で
クローズドゲインがやや小さくなる。



・これによってモーショナルフィードバック調整抵抗を電圧帰還側から電流帰還側に回すほどに、低音(ウーハー)の制動がきつめから緩めに変化する。という効果を発揮する。



・が、このモーショナルフィードバック調整の効果はそう有用ではなかったのか、この方式もとうに捨てられてしまった。



・実際これでモーショナルフィードバックなのか?という論点もあるが、少なくとも、これでこのパワーアンプ出力のインピーダンスが小さいものから大きいもの(電圧出力から電流出力方向)に変化する。



・が、世の中のスピーカーが電圧出力のパワーアンプを前提に作られている現実においては、この方式の意味は殆どなかったということだろう。大体のスピーカーでは、電流出力最高方向にセットすると低音がボワンボワン(大げさな表現です。)になってしまうから。



要はスピーカーとの相性の問題、丁度よい調整点を探す手間の問題なのだが、まぁ、大体は電圧帰還最大にするのが良いスピーカーシステムが大半なので、特に必須の機能ではなかったということなのだろう。



・とは言え、スピーカーシステムによっては効きすぎる制動が過剰に感じられることもあり、その場合はやや電流出力方向に調整すると低域の豊かさを感じられて丁度良い場合があるのも確か。



・なので、この機能も引き続き残しておく。
10kHz方形波応答を観る。



・入力1Vp−p10kHz 方形波。



・モーショナルフィードバックコントローラーはCNF一杯。
非常に綺麗な方形波応答だ。



・だが立下りきる直前に多少のリンギング一波が生じている。何故だろう?



・知らない。



・なお、VNF一杯にしても応答波形に特段の変化はない。
・歪率を観る


・負荷は8Ω。


・VNE:MAX。
・64W以下では全域で0.1%未満。



・最大出力は歪率1%未満で70Wといったところ。



・十分な出力だ。
・内部。
  
・音

・を聴いて終わるところだったのだが、終わらず、回路を次のように変えた。
   
・スピーカーに流れる電流検出抵抗のR23を、0.47Ωから0.1Ωに変えた。



・8Ω負荷の場合、このクローズドケイン設定では、VNF:MAX時とCNF:MAX時のクローズドゲインが変わらないようにするためにはR23は0.68Ωとする必要がある。



・今回は0.68Ωが入手できなかったので0.47Ωにしたのだが、これを0.1Ωに変えたのである。



・理由は音。



・0.47Ωでは、音がちょっと緩く、いまいちハートに沁みてこない。

・が、この抵抗を0.1Ωにすると、VNF:MAX時とCNF:MAX時のクローズドゲインの乖離が大きくなる。



・右の上がVNF:MAX時で下がCNF:MAX時。



・下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ時だが、CNF:MAX時のクローズドゲインはVNF:MAX時より2dB〜3dB大きくなっている。



・が、言ってみればそれだけのこと。
・で、0.47Ωでは音がちょっと緩くていまいち心に沁みてこないのは、もしかすると出力インピーダンスの問題ではないだろうか。



・と、電流注入法でアンプの出力インピーダンスを観る。
・上の図が、R23の電流検出抵抗が0.47Ωの場合。



下からVNF:MAXの場合、VNF-CNF中間の場合、CNF:MAXの場合である。



・VNF:MAXで1.22Ω、VNF-CNF中間で2.48Ω、CNF:MAXでは4.3Ωである。



・下の図が、R23の電流検出抵抗が0.1Ωの場合。



・VNF:MAXで0.41Ω、VNF-CNF中間で0.7Ω、CNF:MAXでは1.13Ωである。



・R23が0.47Ωではやはり全体的に出力インピーダンスが高い。


・R23が0.1Ωで丁度良い変化範囲だ。



・こういうことであれば、VNF:MAX時とCNF:MAX時の2dB〜3dB程度のクローズドゲインの乖離より、出力インピーダンスの数値を重視するのが正しいだろう。
・こうしてまた音を聴く。



・引き締まって、コントラストも弾力も自然で魅力的な本来の音を取り戻した。



・低音の沈み込みや弾力はUHC-MOSのNo-144改(4Ω対応)に何ら引けを取らないし、中音から高音のきめ細やかさなど、とても爽快。



・魂が伝わる心に沁みる音だ。



・音楽が香る。



・これだね。
    
・気分を良くして裏山に散歩に出かける。



・爽やかな五月。



2019年5月19日




・パイロットLEDのアラート色はやはりふさわしくない。ので、グリーンLEDに変更。







TR 2SB541-2SD388

パワーアンプ兼パワーIVC





リボーン



20年前に製作したNo−139(もどき)その2 with 2SD217パワーアンプ。

・解体。

2SB541−2SD388パワーアンプ兼パワーIVCとしてリボーン。

・電源部やケース、回路素子で使えるものはそのまま活用し、


・こんな感じ。


・完全対称型を止め、2電源、不完全対称型、2段差動アンプによる電流ドライブプッシュプルフォロア出力段など、先に製作した2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCにほぼ同じに。


・シミュレーションでは、SPICEモデルがない2SC1400は2SC1775Aで、2SA653は2SA606で、2SC1161は2SC959で、2SB541は2SA1943で、2SD388は2SC5200で代用。は、恒例。


・終段パワーTRのアイドリング電流は各100mA、パラで200mAとする。右のシミュレーションでは各99mA。
・そのゲイン-周波数特性。


・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)としたパラメトリック解析。赤のオープンゲインと青のループゲインは、下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。緑はクローズドゲイン。


・赤のオープンゲインは、4Ω負荷時66.1dB、8Ω負荷時71.7dB、16Ω負荷時77.0dB、32Ω負荷時81.8dB、64Ω負荷時85.7dB、100kΩ負荷時93.1dB。


・青のループゲインは、4Ω負荷時39.2dB、8Ω負荷時44.8dB、16Ω負荷時50.2dB、32Ω負荷時54.9dB、64Ω負荷時58.8dB、100kΩ負荷時66.2dB。


・緑のクローズドゲインは26.8dB程度。


・と、2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCとほぼ同じ。

・ミドルブルック法でパワーIVC動作時のゲイン-周波数特性を観る。

・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)としたパラメトリック解析。赤のオープンゲインと青のループゲインは、下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。緑はクローズドゲイン。


・赤のオープンゲインは、4Ω負荷時66.1dB、8Ω負荷時71.7dB、16Ω負荷時77.0dB、32Ω負荷時81.8dB、64Ω負荷時85.7dB、100kΩ負荷時93.2dB。


・青のループゲインは、4Ω負荷時39.2dB、8Ω負荷時44.8dB、16Ω負荷時50.2dB、32Ω負荷時54.9dB、64Ω負荷時58.8dB、100kΩ負荷時66.2dB。


・緑のクローズドゲインは26.8dB程度。


・と、パワーアンプ動作時と同じ。


・クローズドゲインが高域で減衰しない。ミドルブルック法では何故かこうなる。仕様?
1.4Vp−p10kHz正弦波を入力し、各部の動作を観ても、2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCの場合と同じだろう。



・なのでこの際、パワーIVC動作における3.6mAp−p100kHz正弦波入力で、各部の動作を観る。



・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。



・パワーアンプ時の動作は2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCで観ている。ので、そちらで。
・1番下が出力電位と終段上下パワートランジスタそれぞれのパラのコレクタ電流値。



・電圧推移のピークが±30V強だが、前段電源を終段電源と共用した±34V電源なので、この辺が出力限界。



・100kHz正弦波なので、上下トランジスタのコレクタ電流は立下りに多少の遅れが生じている。そのため、それを引き抜くプッシュプル反対側のトランジスタに電流が流れている。



・要するに多少貫通電流が生じている。



・下から2番目はその際の2段目差動アンプの電流値。上から2番目が、終段プッシュプルドライバーのコレクタ電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移。



・いずれにも、終段パワートランジスタのスイッチング時にパルス的な電流増加が観られる。



・貫通電流の原因である終段トランジスタのCob等の入力容量等の充放電のための電流かな。
・同じく、パワーIVC動作における3.6mAp−p100kHz正弦波入力での各部の動作だが、終段上下トランジスタのベース−ベース間に1uFを追加した場合。
・終段パワートランジスタのスイッチング時の貫通電流は皆無となった。



・上から2番目の図に、加えたC2に流れる電流値を赤で表示してある。



・上下トランジスタのスイッチング時にC2にパルス的な電流増加が観られる。上下トランジスタの入力容量等の充放電電流がこのCを通って流れ、結果上手く行くということかな。
・同じくパワーIVC動作で、±3.6mAp−p100kHz方形波入力で、各部の動作を観る。



・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。
・一番下が出力波形。当然だが、どの負荷でも同じ波形。オーバーシュートもアンダーシュートもない(ような)素直な波形だ。1uSで60V程度の立上り、立下りであり、これまで製作した電流ドライブプッシュプルフォロア型パワーアンプ&パワーIVC達とほぼ同じスルーレート。



・下から2番目が終段上下トランジスタのパラのコレクタ電流値だが、それぞれの立下りの遅れに伴い、貫通電流が流れている。



・上から2番目が、終段をドライブする2SC959と2SA606のコレクタ電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移。



・いずれにも、終段パワートランジスタのスイッチング時にパルス的な電流増加が観られる。



・トランジスタだから、コレクタ電流を流すためには1/hfeのベース電流を流さないといけない故にかピーク400mAにも達しているが、そのピークのタイミングとコレクタ電流のピークのタイミングが合わない。



・要すれば、これらのパルス電流のピーク付近は、貫通電流の原因である終段トランジスタのCob等の入力容量等の充放電のための電流。なのに充放電が足りていないので貫通電流が流れる。
・同じく、パワーIVC動作における3.6mAp−p100kHz方形波入力での各部の動作だが、終段上下トランジスタのベース−ベース間に1uFを追加した場合。
・一番下が出力波形。特に変化はない。



・下から2番目が終段上下トランジスタのパラのコレクタ電流値だが、貫通電流がほぼなくなった。



・上から2番目が、終段をドライブする2SC959と2SA606のコレクタ電流値の推移、1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移だが、2SA606のコレクタ電流値を除いてそのピーク電流値が小さくなっている。



・上から2番目の図に、加えた1uF(C2)に流れる電流値推移を赤で加えて表示してある。



・方形波の立上り、立下り時にその1uFにパルス電流が流れている。そのお陰で終段上下トランジスタのコレクタ電流の立下りの遅れ、要するに充放電の遅れが解消され、貫通電流が発生しないのだろう。


・が、通常このような高周波はアンプに入力されることはないので、C2は必要ない。
・上の方形波応答の出力波形には、実は僅かにオーバーシュートとアンダーシュートがある。



・その原因は初段差動アンプJ1のゲート抵抗R1、820kΩであり、この抵抗を短絡しゲートをアース電位にすればそれは解決する。のは、これまで製作したパワーアンプ兼パワーIVCに共通。
・こう。



・が、パワーアンプ兼パワーIVCとして運用するので、この程度は無視。
   
・解体したNo−139(もどき)その2 with 2SD217パワーアンプではどうか。



2Vp−p100kHz正弦波入力での各部の動作を観る。



・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。
・1番下が出力電位、下から2番目が終段上下パワートランジスタのコレクタ電流値。



・電圧推移のピークが±30V弱。もう少し可能だが、まぁ、この辺で。



・100kHz正弦波なので、上下トランジスタのコレクタ電流は立下りに多少の遅れが生じている。そのため、それを引き抜くプッシュプル反対側のトランジスタに電流が流れている。要するに貫通電流が生じている。が、この程度なら十分許容範囲。



・上から2番目が、終段ドライバー2SC959のコレクタ電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのベース電流値の推移。
・±2Vp−p100kHz方形波入力での各部の動作を観る。



・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。
・一番下が出力波形。


・1uSで60V程度の立上り、立下り。今回リボーンしたパワーアンプ兼パワーIVCと同じ程度。これらのスルーレートは、初段の動作電流と2段目差動アンプの位相補正Cの容量で決まっているので、これらが同じ両機が同じなのは当然。


・下から2番目が終段上下トランジスタのパラのコレクタ電流値だが、それぞれの立下りの遅れに伴い、貫通電流が流れている。


・これはシングルドライブでは解消できない。100kHz正弦波応答で上の程度に収まるので我慢するしかない。


・が、実機には方形波入力はしないのが吉。


・上から2番目が、終段をドライブする2SC959のコレクタ電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのベース電流値の推移。


・いずれにも、終段パワートランジスタのスイッチング時にパルス的な電流増加が観られる。


・要すれば、これらのパルス電流は、貫通電流の原因である終段トランジスタのCob等の入力容量等の充放電のための電流。なのに充放電が足りていないので貫通電流が流れる。
今回リボーンしたパワーアンプ兼パワーIVCと同じ。
   
・戻って、



・電流注入法で出力インピーダンスを観る。
・低域で41.9mΩ、100kHzで76.8mΩ。

殆ど同じ回路でシミュレーションしているのに、2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCより高め。

・何故か? 知らない。

・終段アイドリング電流が半分のせいか?

・パワーIVC動作における歪率を観る。
2SA1007A-2SC2337Aのパワーアンプ動作における歪率と殆ど同じだが、100kHzについては、ループゲイン≒NFB量が20dB程度少ない、すなわち1/10程度であるから、歪率は1kHz、10kHzの10倍程度になる、と、理屈通りになっている。



・シミュレーション回路が殆ど同じだから当然だが、電源電圧が±1V低いのでその分最大出力は小さくなっている。



・1kHzと10kHzで見れば、8Ω負荷では0.1%以下で55W、1%以下を許容すれば64Wといったところ。4Ω負荷では0.2%以下で110W、1%以下を許容すれば120Wといったところ。100kHzについては、8Ω負荷では1%以下で60W、4Ω負荷で110Wといったところ。



・今回は、終段の上下パワートランジスタのベース−ベース間に1uFのCを追加した場合のデータも加えてある。



・結果、合計12本のグラフがあるのだが、データが近いので余り鮮明には違いが分からない。



・が、8Ω負荷では、1kHz正弦波でも10kHz正弦波でも、55W出力までは1uFを追加した場合の方がやや低歪率である。特に10kHzでは1uFを追加した方が1割から2割低歪率。


・4Ω負荷では、1kHz正弦波でも10kHz正弦波でも〜55W付近までは1uFを追加した方がやや低歪率であり、特に10kHz正弦波では1uFを追加した方が1割から2割低歪率となっている。が、55W以上では逆に1uFを追加しない方がやや低歪率。100kHzでも32W以上では1uFを追加しない方が低歪率である。



・なかなか面白い結果だが、何故か? 知らない。



2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCとの比較にもなるので、本機では1uFを追加して運用するのも面白いか。






・以上は単なるシミュレーションである。信じてはいけない。
     
・パワートランジスタが片チャンネル4個になるが、ケースがOS115−26−33BXなので、放熱器に149mm×100mm×54mmのTF1310A2を使うのは不可能。

・なので、ジャンクボックスを覗くと、21年前に製作しとっくに解体したNo−139(もどき)、去年リメイクしたBATTERY DRIVE MOS-FET POWER AMP(GOA&不完全対称)等で使用していた、フレックスのTF1210A2がいくつか転がっている。

・その寸法を測ってみると、122mm×100mm×40mm。

・そう言えば、No−144(改)(4Ω対応)では、OS99−26−33BXにTF1208(122mm×80mm×40mm)がぴったり収まっている。ので、もしかすると、この場合も上手く行くのではないかと、OS115−26−33BXの側面にTF1210A2を2個並べて当ててみた。

・ぴったりフィット。


・これでいこう。

・などと上手く行くほど世の中甘くはない。

・TF1210A2の高さ100mmが1.2mm低ければ、21年前に作ったNo−144(改)(4Ω対応)での方法、要するにNo−158の方法で上手く行ったのだが、残念ながら支柱の上下幅が98.8mmなのでその1.2mmの差でその間に放熱器が収まらずこの方法は不可能。

・同じく1.2mmの差を何とかし、近ごろOS115−32−33BXとTF1310A2でパワーアンプ兼パワーIVC達を作った訳だが、これらで採用した方法も、TF1210A2の長い方のフィンの幅が支柱上下の取り付け金具の短い方の幅(20mm)より狭い(TF1310A2は広い)ため、これをまたいで取り付けることが出来ず、この方法も不可能。

・この世は大体上手く行かないもの。

・残る手法は、No133(94.6)で採用された、支柱をフロントパネルとリアパネル(OSシリーズでは正しくは共にサイドパネル(側板))の内側に移す方法。

No133では、幅54mmのTF−1314A2を取り付けるために支柱を内側に57mm移している。従って、幅40mmのTF1210A2の場合は支柱を43mm移せば良いはず。

・が、その際は、天板と底板も幅を両側とも43mmずつカットしなければならない。道具もない素人には不可能と言うべき作業。

・なので、良い手はないかとタカチのHPを眺めてみると、OS115-26-23BXの天板のサイズが、OS115−26−33BXの天板のサイズに比べて、横幅が100mm小さいだけ他は同じではないか。これだと、支柱を左右とも50mm内側に移すとOS115-26-23BXの天板、底板がぴったりと収まるはず。

OS115-26-23BXの天板、底板を使おう。

・が、厚み40mmのTF1210A2をそうやって内側に移動したパネルに10mmのスペーサーでケース左右外側に取り付ければ、フロントパネル及びリアパネルの外縁より50−43=7mm内側に引っ込んだ格好になるだろう。

・それで不恰好か? は、やってみなければ分からないし、たとえ多少不格好でも出来合いのモノで何とかするのだから、妥協も必要。

・早速タカチからOS-115-26-23BXの天板と底板1組を入手。

・また、このようにケースを改造すると、部品配置位置の関係で今使用中のフロントパネルとリアパネルが使えなくなる。

・穴が開いたまま使えば使えないことはないが、それではかなり見栄えが良くない。

・ので、タカチから
OS115−26−33BXのサイドパネル(側板)2枚も入手。

・ケース加工はもとより楽しくないが、今回の難関は、支柱を50mm内側に移すために、フロントパネルとリアパネル内側のフランジを左右とも50mmずつカットし取り除く作業。

・先生の説明では、金ノコでフランジを所定の位置で切り、その部分までのフランジの根元の両面にカッターナイフで切りすじを入れれば、後はその部分をペンチで折り曲げるときれいにカットできる、と、ある。

・が、フランジはそんなにヤワではない。切りすじを入れペンチで折り曲げようとしてもびくともしない。

・根元の切りすじをもっと深くしなければならないのかもしれないが、その作業をやっていたのではおとといになりそう。

・なので、根元にカッターで深く切りすじを入れるのは諦め、代わりに浅い切りすじのまま
取り外すべきフランジを金ノコでいくつかに分割し、分割したフランジ毎にペンチで折り曲げてみると、上手く根元からポキっと取り除くことが出来た。

・手作業だから、もとより数値通りに正確に切ったり、穴あけしたりは出来ない。ので、全て現物合わせで作業。

・カットは過ぎるとリカバー不能なので内輪にカットしてやすりで慎重に微調整する。穴あけも慎重に行う。

・そうしてケースとして組み上げてみると、
手作業でこれならまぁまぁかな。






・気を良くして、フロントパネル、リアパネル等の穴あけ加工と化粧も一気に。






・インスタントレタリングは、MJオンラインストアの出来の悪いのを止む無く使う。






・基板を吊り下げるための桟も渡し、






・筐体出来上がり。
 
   
・基板も出来上がってきた。



・まず保護回路部。



・回路はいつもの通りK式を借用。
・次にアンプ部。



2SA1007A-2SC2337Aパワーアンプ兼パワーIVCのアンプ部と同じ。



*MKP-QSはこの後V2Aに交換。(見つかったので)

・回路はこう。

・シミュレーション回路に同じ。
  

・電源部は既存。

・電源トランスは、容量1KVAのテクニカルサンヨー TS−80。今となっては手に入らない。

・24V19.5Aとは凄い。マルチアンプシステム用のパワーアンプ3台にこれ1台で対応しようと設計されたもの。

・真空管ヒーター用6.3Vも多数用意され、ハイブリッドパワーアンプにも対応。

・が、このアンプで使うのは24V巻き線による±34Vのみ。


  
・アンプ部は手順を踏んで組み立て、
・所要の調整をしながら配線作業をし、
・出来上がり。
  
・早速音出し。
・この人の作品は音が良く、心に沁みる。



リボーンした2SB541−2SD388パワーアンプ兼パワーIVC。



・凛として情感豊か。
・J-POPだが自然な方。



・まぁまぁ。
・まぁまぁ。
・良い。







・こういうのを気楽に聴くのも乙。
 
・この人は、真正シンガーソングライター。

・感受性豊かに内なる美意識をぶつけてくる。

・若い(当時)のに凄い。詩、曲、聴いていて気持ち良いくらいに。

・この方も20年。






・彼女たちの心のひだをそのまま引き出す2SB541−2SD388パワーアンプ兼パワーIVC。良いアンプになった。
 



2021年8月18日



・インスタントレタリングで化粧。
  








メンテナンス




・特段のメンテ項目もないが、この際、オシロで位相補正の適正度を観る。

10pF 横軸20uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・位相補正は現行の10pF。



・先ずは、10kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・輝線に何かまとわりついているが、観測環境のせいなのでそれは無視。



・出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ている。
10pF 横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・次に、100kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ている。



・いにしえの教本では、このように100kHz方形波応答に、1波のオーバーシュート、アンダーシュートが出るように位相補正を調整するという教義だった。



・よって、これで良い。
・が、一応、LTspiceで、位相補正C1=10pF、12pF、13pF、15pFの場合の100kHz方形波応答を、パラメトリック解析で観る。
・位相補正C1=10pFでは、実機の100kHz方形波応答と同様に、1波のオーバーシュート、アンダーシュートが出ている。



・位相補正C1=12pF、13pF、15pFの場合はオーバーシュートもアンダーシュートもない滑らかな肩特性の応答になる。



・勿論、位相補正C1の容量が少ないほど立上り、立下り速度は早い。



・で、どうすべきか?



・どうせ変えても音の変化は聴き取れない。



・と言っては見もふたもない。
・ので、10pFに2pFをパラにして、位相補正を12pFにしてみる。
   12pF 横軸20uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・10kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・出力波形には、オーバーシュートもアンダーシュートもない。
   12pF 横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・100kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが僅かに出ている。アンダーシュート側には僅かにリンギングもある。



・良いのではないかな。
   10pF 横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div 負荷8Ω
・参考までに、8Ω抵抗を負荷にした場合の方形波応答を観る。



・位相補正が10pFの場合。



・100kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートのほか、うねりと言うかリンギングが出ている。



・入力波形の方は良く分からない。
   12pF 横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div 負荷8Ω
・同じく、8Ω抵抗を負荷にした場合の方形波応答。



・こちらは位相補正12pF。



・100kHz方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートのほか、うねりと言うかリンギングが出ているが、そのうねりと言うかリンギングは、10pFの場合より早く終息しているようだ。

・位相補正は12pFにする。

・よって、全回路図はこう。

・位相補正が10pFから12pFになっただけ。

     
・位相補正を10pFから12pFにして、音は良くなるか?
・素晴らしく良くなった。






・と、言えればオーディオ評論家になれるかも知れない。






・が、以前から素晴らしく良いので、要は同じ。(爆)
     



2023年11月23日